本当にあった怖い雇用契約書③30分単位未満切捨ての勤務時間契約
ご相談第3弾目はこちらになります
雇用契約書で勤務時間について30分単位で計算するとありましたが、これって許されているのですか?
結論から申し上げますと、「日々の勤務時間を30分単位で切り捨てる」運用は、労働基準法違反(賃金全額払いの原則)となります。
社労士として顧問先から「事務作業が大変だから」と相談を受けることが多い部分ではありますが、法的なリスクは非常に高いです。
1. 法的根拠:賃金全額払いの原則
労働基準法第24条では、賃金は「その全額を支払わなければならない」と定められています。労働時間は1分単位で把握・計算するのが原則です。
-
切り捨て(違法): 14分や29分の労働を「0分」として扱うことは、未払い賃金が発生するため認められません。
-
切り上げ(適法): 1分でも働いたら「30分働いたものとみなす」という、労働者に有利な処理であれば法的には問題ありません。
2. 唯一認められている「30分単位」の特例
事務簡素化のための端数処理として、以下のケースに限り、「1か月間の合計時間」に対する30分単位の処理が認められています(昭和63年2月14日 基発第150号)
あくまで「1か月の合計」に対してのみ許される処理です。「1日単位」で毎日30分未満を切り捨てることは、この通達の範囲外であり違法です。
3. 雇用契約書に「30分単位」と書くリスク
たとえ雇用契約書に明記し、労働者が合意(サイン)していたとしても、労働基準法に達しない条件は無効となります(労働基準法第13条)。
-
遡及支払いのリスク: 労働基準監督署の調査が入った際、過去に遡って未払い賃金の支払いを命じられる(是正勧告)対象になります。
-
付加金の支払い: 裁判沙汰になった場合、未払い額と同額の「付加金」の支払いを命じられる可能性があります。
実務上のアドバイス
顧問先が「30分単位」にこだわる理由は、多くの場合「計算の煩雑さ」です。
しかし、現在の実務では以下の方法は有効です。
-
勤怠管理システムの導入: 最近のクラウド型勤怠管理システム(KING OF TIME、マネーフォワード、ジョブカン等)は、1分単位の打刻と月合算の端数処理を自動で行えます。
-
固定残業代の検討: 毎月の細かい計算を避けたいのであれば、適切な金額の「固定残業代(みなし残業)」を設定し、それを超えた分を1分単位で精算する形を提案するのも一つの手です。
契約書の文言としては、「労働時間は1分単位で計算するものとする。ただし、1か月の時間外労働等の合計時間に30分未満の端数がある場合は切り捨て、30分以上ある場合は1時間に切り上げるものとする」といった、適法な範囲での記載に修正することをお勧めします







