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Release: 2025/11/04 Update: 2025/11/05

初めての一般事業主行動計画策定ガイド:公表・周知のポイントとは?

一般事業主行動計画とは?

 一般事業主行動計画とは、女性活躍推進法に基づいて、企業が働く女性への支援を強化し、職場環境の改善を目的に策定する計画です。
この計画では、企業が女性労働者の活躍促進や働きやすい職場づくりを目指して具体的な目標を設定します。
行動計画の内容は、労働者にとっての条件改善や機会の拡大を図るだけでなく、企業自身にとっても持続可能な事業運営の実現を後押しする重要な指針となります。

 

女性活躍推進法と一般事業主行動計画の関係

 女性活躍推進法は、女性労働者がその能力を十分に発揮し活躍できる社会を目指すために制定されました。
この法律に基づき、一定規模以上の事業主は一般事業主行動計画の策定が義務付けられています。
具体的には、企業は自社の状況を分析し、女性労働者の職場環境の改善や職業生活における機会提供について取り組むべき項目を明確にする必要があります。
行動計画は単なる義務ではなく、女性活躍を推進するための具体的な手段として機能します。

一般事業主行動計画における目的と意義

 一般事業主行動計画の目的は、企業が自社の女性労働者の現状を把握し、それに基づいた具体的な目標を設定して女性がより活躍できる職場を構築することです。
この計画を通じて、企業は単に女性労働者のための対策を講じるだけでなく、男女問わず全ての労働者が働きやすい環境を提供する意義を持ちます。
また、計画は企業の社会的責任を果たすうえで重要な位置づけとなり、策定およびその公表は企業のイメージアップにもつながります。

対象企業と法律上の義務

 一般事業主行動計画の対象となるのは、常時雇用する労働者が101人以上の企業です。
ただし、常時雇用労働者数が301人以上の企業については、女性の活躍に関する情報公表が追加で義務付けられています。
この対象には、正社員だけでなく、パートタイム労働者やアルバイト、契約社員も含まれます。
こうした義務を果たさない場合、行政からの指導を受けることもあるため、対象企業は女性活躍の促進に向けた取り組みを迅速かつ適切に行う必要があります。

計画策定の基本的なフロー

 一般事業主行動計画の策定は以下の手順で進めます。まず、企業は自社内の女性活躍の状況を把握し、課題を分析します。
次に、それを基に具体的な目標を設定し、実施に向けたスケジュールを策定します。
この計画を公表し、労働者への周知を行った後、労働局へ届出を行います。
そして、計画に基づいて目標達成に向けた取り組みを進め、進捗を管理するプロセスが続きます。
最後に、必要に応じて計画の見直しを行うことも重要です。

初めての行動計画の策定時に押さえるべきポイント

自社の状況把握と課題分析

 一般事業主行動計画を策定する第一歩として、自社における女性の活躍状況を正確に把握し、課題を分析することが重要です。
女性活躍推進法に基づき、企業は雇用状況や職場環境、男性と女性の賃金差異、昇進率などのデータを収集し、具体的な課題を見つける必要があります。
このステップは、計画の実効性を高める基盤となるため、丁寧に取り組むことが求められます。

目標設定:数値目標と取り組みの選定

 課題分析に基づいて実現可能な目標を設定します。
女性労働者の採用率や昇進率の向上、育児休業取得率の男女双方への拡大など、具体的な数値目標を掲げることが必要です。
法律上、計画には少なくとも2つ以上の数値目標を設定する義務があります。
また、職業生活と家庭生活の両立支援をはじめとした取り組みを選定し、自社の強みに合わせた計画を練ることが重要です。

実施計画のスケジュール策定

 行動計画を実行可能な形にするために、具体的なスケジュールを策定します。
計画期間は通常3年以上が推奨されますが、この期間内でどのように各目標を達成するかを示すタイムラインを作成します。
例えば、最初の1年で課題解決のための施策を展開し、2年以降にその効果を測定・改善するステップを設定するといった進行計画が考えられます。

経営層の合意形成と体制作り

 計画の実行を成功させるには、経営層の協力が不可欠です。経営層に女性活躍推進の重要性を訴えかけ、計画への理解と支持を得る必要があります。また、計画を実施するにあたり、社内に専任のプロジェクトチームや担当者を配置し、体制作りを行います。この段階での取り組みが、計画の遂行を円滑に進める鍵となります。

計画の届出とその方法

 一般事業主行動計画を策定した後は、これを都道府県労働局へ届け出ることが義務となっています。届出の際には、計画の詳細はもちろん、自社の女性活躍状況や課題分析の結果も報告します。
また、届出後は社内外に対して計画を公表し、従業員や社会に向けて企業の姿勢を示すことが求められます。
この情報は、企業のホームページや企業情報公表サイトを用いて発信することが一般的です。

公表・周知の重要性

社内周知に向けた取り組み方法

 一般事業主行動計画の策定後、その内容を社員に向けて適切に周知することは非常に重要です。
特に、女性活躍推進法に基づいた行動計画の意義や目標について社内全体で共有することで、社員一人ひとりの理解と協力を得やすくなります。社内周知には、社内掲示板やメール配信、イントラネットの活用が効果的です。
また、経営層からの積極的なメッセージ配信や朝礼、ミーティングの場での説明を通じて、組織全体での一体感を醸成しましょう。
さらに、女性労働者が目指す職業生活の向上ポイントや働きやすい環境づくりについて具体的な事例も交えて共有することで、行動計画への関心を高めることが可能です。

社外公表でのポイントとメリット

 一般事業主行動計画を社外に公表することには、多くのメリットがあります。
まず、労働者や求職者に対し、企業が女性の活躍推進や職業生活と家庭生活との両立支援を重視していることをアピールできます。
このような姿勢は、企業イメージの向上に繋がり、優秀な人材の確保にも寄与します。
公表する際には、計画の具体的な目標や取り組みの内容をわかりやすく示すことが大切です。
また、企業の公式ウェブサイトや「女性活躍推進法」に基づく専用の公表サイトを利用することで、社会全体への情報共有をスムーズに行えます。
このように、行動計画の社外公表は、企業の責任感を示すだけでなく、信頼性の獲得にも大きく貢献します。

情報提供の具体例:公表媒体の選択

 行動計画の公表媒体としては、複数の選択肢があります。一般的には、企業の公式ウェブサイトが主な公表手段となります。
特に、採用ページやCSR(企業の社会的責任)関連ページに掲載することで、求職者や取引先に向けたアピール効果が高まります。
また、厚生労働省が提供する「一般事業主行動計画公表サイト」への登録も有効です。
このサイトには、情報を整理された形で掲載できるため、他社との比較も容易になります。
加えて、地域の労働局や業界団体を通じて、行動計画や女性活躍推進に関する取り組みを広く発信することも有益です。
それぞれの公表媒体の特性を理解し、適切に組み合わせて活用することで、情報発信の幅を広げることができます。

「えるぼし認定」「くるみんマーク」との関係

 一般事業主行動計画の公表や取り組みは、「えるぼし認定」や「くるみんマーク」と深く関連しています。
「えるぼし認定」は、女性活躍推進法に基づき、女性労働者の活躍推進に積極的に取り組む企業に付与される認定で、取得することで企業の信頼性や魅力をさらに高めることができます。
一方、「くるみんマーク」は次世代育成支援対策推進法に則り、子育て支援に積極的な企業が認定される制度です。
これらの認定を目指す企業は、まず行動計画を策定し、その達成状況や成果を適切に公表することが重要です。
認定を受けることで、消費者や求職者からの評価が向上し、企業ブランディングの強化にも繋がります。

策定後の実行と見直し

進捗管理の重要性と方法

 一般事業主行動計画を策定した後、その実行過程と成果を適切に管理することは極めて重要です。特に、計画に基づいて設定した数値目標や取り組みの進捗状況を定期的に確認することが必要です。この進捗管理を通じて、女性活躍推進法で求められている「女性活躍に関する情報公表」の義務にも対応しやすくなります。

 効果的な進捗管理方法としては、計画の達成状況を数値化し、チームや社内会議で定期的に共有することが挙げられます。
また、女性労働者に関する指標だけでなく、「職業生活と家庭生活との両立支援」の成果も含めて評価すると、計画全体の実現度合いをより包括的に把握できます。

社内外からのフィードバック活用

 進捗管理と合わせて、社内外からのフィードバックを計画の改善に活かすことが重要です。
例えば、社内では従業員の意見を聞き、計画が現場のニーズにマッチしているかを確認しましょう。
具体的には、アンケート調査や意見交換会を実施するなどの方法が考えられます。

 また、社外の関係者や取引先からの声も計画の評価に役立ちます。
さらに、公表した行動計画や取り組みについて、外部機関や消費者からの反応を分析すれば、女性の活躍を推進する取り組みをさらに洗練させることができます。

計画の見直し時に注意すべき点

 一般事業主行動計画は一度策定すれば終わりではなく、適宜見直しを行うことが求められます。
その際、女性活躍推進法で義務付けられた内容に変更がないか確認することが第一歩です。
法改正や規制の更新に対応し、適切に計画を修正する必要があります。

 さらに、自社の状況変化にも対応することが大切です。
たとえば、組織拡大や新しい事業分野への進出があれば、それに応じた目標の引き上げや取り組み方の見直しが求められます。ただし、あまりにも高すぎる目標を設定すると、計画が現場にとって非現実的になる可能性があるため注意が必要です。

さらなるイメージアップへのステップ

 策定した行動計画の効果を最大化するためには、計画達成後の次なるステップを考えることも重要です。
たとえば、「えるぼし認定」や「くるみんマーク」などの認定取得を目指すことで、企業の女性活躍推進への取り組みが広く認められ、対外的なイメージアップにつながります。

 また、社外公表の際には、自社のウェブサイトや専用の公表サイトを活用し、効果的な情報発信を行いましょう。これにより、ブランド価値の向上だけでなく、優秀な人材の採用にも良い影響を与えることが期待されます。

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